<17>ノーブルタン伯爵

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今日、私の舌に名前をつけた。『ノーブルタン伯爵』。

もうすぐ更新する対談のテープおこしをしていて、いつものことながら私のしゃべりのかつ舌の悪さ、主語と述語の不明確さ、さらにお酒が入ってくるとすべてが不明瞭この上なく、頭の悪そうなこと千万、ああもうこれ以上自分のしゃべるを聞きたくない、と中断した。
ゲストは素晴しい声の、歌い手でもあるし、声優やラジオ番組にも抜擢されるような人である(もうじきのお楽しみ)。しかも、同じくらいに飲んでいるのに、私ばっかりどんどんレロレロになっていく。だから余計に私のそれが目立つ。

今さらそんなことで落ち込むのもかえって誠意がないと(だってみんな今まで、せっかく我慢してくれたのだから)、頭ではわかっているし、人と比較するなんて、と思うが、そう感じてしまったのだから、ちょっとづつやらないとショックが大きい。いちばん慣れることができない相手とは、きっと自分なんだろう。

そういうわけで手を休め、気晴らしに飲み仲間のSさんに電話した。
Sさんも原稿執筆の真っ最中のようで、またかという風に、だからって治せるんだったらもうとっくに治してたでしょ?と云う。
全てはこの舌が悪いんです。あたしは善いんだけど。

先日もライブ後に、お客さんから、アキさんのMCは独特ですねえ、いや、面白いですよ、ああ、きっとここはこう云いたいんだなあ、って、いろいろ想像したり、継ぎはぎしながら聴いてないとなんだかわからないんですけどね、いや、面白いですよ、という感想をいただいた。面白いですよ、を何度も云わせて悪かった。
MCのときはこれでもかつ舌に注意している。ほどよく明瞭に話すように。
注意していないと、いつものレロレロした感じの破裂音を含むへんな独り言にたちまちなってしまうので。

かつ舌の悪いのは、子供の頃からだ。
こう見えても中学校までは勉強もしなくてもよくできた(みんなそういうものらしいが)。それが小学校の時、てつぼうの時間に、てつぼうをしている私を他のクラス女の子が指さして、『あの子、頭悪いらァ?』と、友だちに尋ねたらしい。尋かれた友だちはご丁寧にそれを後で教えてくれた。
そのことを、よく覚えている。傷付いた、という覚えはないが、ああやっぱり、と納得したことを。
だから私の喋り方には知性がない、というのは、気のせいではなく、実相である、とわかっている。

Sさんと話すうち、あ、この舌に名前でもつけてやろうか、とひらめいた。
以前、知人宅の庭に生まれたオスの子猫を引き取り、ノーベルと名付け、あまりに懐かなかったので、しかたなし、同じ庭に再び返しに行った事件を知るSさんは、ノーベルにひっかけて『ノーブルタン伯爵』にしな、と云うのだった。以前私が、Sさんが秘密の仕事をするときのペンネームをつけて差し上げたお返しに。

NOBLEなTONGUE。
舌ベラに名をもつ人はそうは居まい。

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