<29>リベンジ

<29>リベンジ

久しぶりに寝込む。
ライブや仕事が立て込んで、ひと段落したところでうまく発熱した。こういうとき、宇宙の愛のようなものを感じる。ああ、これがライブのない日で良かった、と。1週間ほど本番は入ってないから、焦ることもなくゆっくり休める。もちろんその1週間にやるはずだったことは、あとからツケが来ることは来るが。とにかくライブじゃなくて良かった、と。

そう云えば、何年か前、過労ぎみだったところへタバコの煙をあび、そこへライブをやったので、炎症を起こして、歌っている間にみるみる声が出なくなったことがあった。名古屋でのことで、お客さんにはあんまりわからない感じだったと思うが、自分的にただ張り切って歌って枯れているのと違う、あの独特な『のどが終わってゆく感じ』がはっきりわかった。
だけどそのまま翌日神戸へ。本番前に整体に行ったり(これ、高くつくんだよなあ)、手を尽くしたけど、1曲目からすでに終わっていた。お客さんにもバレバレ。中には声の出ない感じのせつなさが歌にあってて良かった、と云って下さる、仏さまのような人もいらっしゃったが、なんとも申し訳ない気分だった。
そして。
その翌日宮崎へ行かねばならなかった。神戸どころでない、口から出るのはもう声と呼べないものだった。喋るのさえ出来ないのに、どうやって歌おう?だけども主催者と相談して、とにかく、行く、ということになった。あとは朧・・・。恍惚のブルースだった。ある意味。

いやはや。
それ以来、神戸と宮崎には恐れ多くて連絡できずにいたが、でもまた来てね、と云ってくれたっけなあ、いつかリベンジしないとなあ、とずっと頭のすみ、というか、頭のけっこうまん中あたりにあった。
そしてこの9月、宮崎へまた行けることになった。今体調を崩しておけば、熱、汗、咳、鼻水、鼻血。あらゆる穢れ。出すもの出して、すっきり行けそうだ。

ああ、神さま、前回のリベンジ、どうか果たせますように!!

ところで、今日いちにち寝たきりだったが、昼過にRさんが書類を持って訪ねてきた。しばらく話をしていたら、いきなりテレビがついたのである。私は半分横になるような縦になるような、ウネウネ変な体勢を続けていたから、その拍子にリモコンを踏んづけたのかと思ったら、リモコンはピアノの鍵盤の上にあった。
Rさんは以前、私まわりで起きるあらゆる電気製品の異常について、他の全員がワタクシ周辺で、何か科学の解明できぬことが起きていると認めていたのを、ただ一人否定していた人である。あんまりムキになって否定するし、あいつぐ現象で私もイライラして、当時口ゲンカしたことさえあった。
だけどさすがのRさんも、これをきっかけについにそれを認めたのだった。テレビがつくのは、目にモノ云わすごとく、あまりに分かりやすかった。

そんなことでもちょっとリベンジを果たしたような気になりかけたが、いや、リベンジなどと云って喜んでる場合じゃない。私は電気製品の故障で、一体いくら余分な金を払っているか、知れたものじゃないのだ。

 

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