<70> 初めての町

<70> 初めての町

気がつけば冬になっていた。
今年はいつにもまして旅が多かった。旅はたいして稼ぎにはならないが、やらないよりはマシである。つまり、それほど切羽詰まっているワタクシがいる。というわけで、スズキアキ、あいもかわらずです。

ふりかえれば今年、初めての町にたくさん行った。
いわき、恵庭、奄美、四日市、飛騨古川、小松、白山、高遠、安中、佐賀、山鹿、長崎。
どこでもいい出会いといいお湯に恵まれ、ちょこちょこハプニングはあってもいいネタになり、結果オーライだった。どの町にも個性のクッキリした誰かしらに出会い、その人らの人生を垣間見た。

山盛りのしおからを持って現れた人、
毎午后、どこかから人が寄ってきて酒盛りになってしまう人、
息子が甲子園に行けるかもとそわそわテレビを見ながら焼きそば作る中華店主、
素浪人月影兵庫ファンのそば屋店主(焼津出身者へのポイント高し)、
つかの間の息抜きにたまたまその場にいて意気投合した主婦、
すごい豪邸に住んでいる人、ビニルで覆った掘っ立て小屋に住んでいる人、
廃村に移り住んで、長〜い一本道沿いにコスモスを咲かせている人、
前妻との間の子供に連絡しようか迷っている人、
小さな町の公民館の理事の娘、
自ら番頭をする銭湯の二階に自作ラジコン飛行機を飾る秘密部屋を持つ男、
店にやってくるお客をつかまえ半強制的に結婚し、今とても幸せな女性。

去年はじめたツイッターで、旅の実況などもココロミタが、実況するのは旅のはじめだけで、町や人に接するとすっかりご無沙汰になってしまった。たまに旅の実況を読みつつ旅気分にひたってますよ、などというメールを貰うと、嬉しくなってまたツイートし出す。でも、お手軽にツイートしていると、それで気が済んでしまって、コラムを書かなくなってしまう、というフシがある。

3日前に戻って来た、記憶にあたらしい九州の旅では、あまりに人もお湯も良すぎて(ホントに)、気がゆるみ、というか、心身の掃除として、風邪をひいた。ツアー中のライブには影響なかったが、まだ咳が出たりする。
だから今日はリハーサルをキャンセルして一日寝ていることにした。こういうとき、コラムを書きたくなったりする。ライブや人に会ったりで『発散』ばかりしていると、創作できない。だからこうやって風邪でもひいて一人静かに『籠もる』日を持てたことも、いい旅の収穫の一つだ。

 

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