「鈴木亜紀とジャンヌ・ダ ルク、そしてAKBとの底通性の考察」
相田毅


そうなのだ。
彼女のグラスの持ち方が、ずぅっと眼の粘膜から消えない。
テーブルに柔らかくついた肘。
手首をそっと、内側に折り曲げるしなやかさ。
僕は彼女の、その右手を記憶の中心に据えている。
だから、彼女の顔は画面の右端に寄っているのだ。
ということは、僕は亜紀さんの顔の映像処理を、左脳で行っていることになる。
だから?…なのだが。
亜紀さんが、写真等で見ると。
大柄に見えたり、威風堂々と感じるのはひとつには、このグラスの持ち方に理由があると思うのだ。
通常は、たぶん、グラスを持つ手を相手に向けるか、
もしくは軽く45度くらい傾け、維持するのが定例だと思う(僕は)。
それを彼女は、手首を内側に90度以上向けて持つ。
グラスを自分に向けて、掲げている感じなのだ。
腕橈骨筋(わんとうこつきん)が非常に美しく相手に向けられる。
腕橈骨筋はもともと、腕の外側の筋肉のため、あまり人目にはさらされない。
機会があるとしたら、相手を抱きしめる時や、肩を組む時。
あとは、腕相撲をする時くらいだ。
主に、相手に親愛の情や力強さを
あの、ジャンヌ・ダルクも、ここが美しかったのは有名な話。
もちろん、それだけではない。
他にも色んな要点があると思うのだ。
それが集合積載して、亜紀さんの威風を清々しいものにしているのだろう。
ただ、一度しか会っていない僕には、まだ、それ以外のビューポイントを
見つけられないでいるのだが。
そして、その思いつきに被さってきたのが、彼女の著書である。
まだ、数頁しか読んでないけど、僕には確信したことがある。
それは、彼女は人生を生きている、ということだ。
誰だって、人生を生きている。そりゃそうだ!。
でも、彼女は幼い時から人生を。
つまり、人の生を考えて生きてきたのではないだろうか?。
自分以外の人間の生を、この世にたゆたう、万物の生を。
考えて生きてきたのではないだろうか?。
焼津の海っぱたで。神社の境内で。
世界を視ていたのではないだろうか?。
そして、そこには恋愛論が介在しない。
だって、自分以外の生や、万物に対する思慕とは、
特定の相手に向ける愛情ではなく、博愛と言える
表現行動なのだから。
恋愛特有のエゴや、過剰な自意識は、博愛からは削除される
彼女の歌詞に宇宙や太陽が見受けられるのは、このことと
無関係ではあるまい。博愛なのだ。
みんな太陽に行く…つまりは粒子になって、人は生を果てる。
僕には、そう聴こえる。博愛なのだ。
だから、彼女の歌には所有格がない。
恋愛の歌でも、あなたはワタシのモノ的な表現がない。
(全部聴いてないから、断言はできないけど)
自分の所有さえない。あなたに愛されてるから、あなたの
ものと言える…と表現しているほどだ。
つまり、彼女の歌には所有欲や占領意識が存在しないのだ。
僕が前に指摘した、他意の無さは、このへんに起因するかもしれない。
なので、亜紀さんの人生にはエゴイスティックな恋愛論は見当たらない。(と、思う)
他人を所有したり、傷つけないよう、深謀遠慮に歩いてきたからだ。(見てないけどさ)
特定の相手を所有せず、されず。万物(植物をはじめ)に博愛を捧ぐ。
これはまんま、AKB、鉄の規則と同じではないか?。
ファンという、万人への博愛に徹し、特定の相手に縛られたりを禁止する。
もちろん、亜紀さんは恋愛禁止などではない。
でも、結果として、亜紀さんの万物に対する博愛が、
一般的な恋愛から遠ざかる理由になっていたとしたら、
それはある種、禁止にも似た足かせと言えないだろうか?。
神父が原則的に、特定の女性を愛するのを禁ずるように。
神社の娘として育った彼女にも、聖職者の無意識が脳に流れていても不思議ではない。
(理想の相手が神なのは、偶然だろうか?)
なので、亜紀さんがおぼこい、というのはしごく当然である。
エゴや自意識や憎悪や嫌悪や占拠や所有や…
俗物的な恋愛を通過していないのだから。
けど、それで作品が浅薄にならないのが、彼女の凄さである。
その、豊かで芳醇な味わいは、彼女が人生を生きているに他ならない。
まっすぐに、遠回りをして、好奇の花を愛でていく…。
一見、ムダとも思える行動、アイデアが
、最後には、すべて作品に帰結していくのだ。
僕には、とうていマネのできない亜紀さんの生き方に、
僕は素直に賛辞を贈る。尊敬にも似た愛を感じる。
最後に一つ。
亜紀さんが先日もらした一言。
「地震を一緒に怖がってくれる人がいたらいいな…」
これは、彼女に今までなかった心境なのではないか?
通俗的な恋愛をも視野に入れた、決意表明なのではないか?
(大げさだけど)
おぼこさからの脱却は、今後、彼女の作品にどんな
艶を与えるのか?
世界フィギュアの行方と同じく
今の僕の大きな楽しみである。
(真央ちゃん、頑張れ!。あ、亜紀ちゃんも!)


相田毅