緩風(ぬるかぜ)対談 (2/2)



そらまめ、大豆とさくらえびの煮付けをつまみつつ

坂   この週末にお花の展覧会があって、
    先生たちと稽古しながらきのうも飲んでたんですよ。
    ガソリン!とか云って。で、生けたんだけど、
    ヘベレケになっちゃってて、全然ダメだった。(笑)
鈴   お花、っていうのも、哲学があるんでしょ、なんだか。
坂   あるらしいねえ。
    (ここで、鈴木、録音用MDの電池が足りないのに気がついて
    コンビニへ行く。)
鈴   じゃあ、ちょっと行ってくるよ。・・・
    いつもさあ、お金って、封筒に入れてるんだよね。
    (鈴木、封筒の中からお金を出す。)
坂   すご〜い、なんか、集金人みたい!
鈴   まあ、集金人だね。各地のヒトから集金して歩く。
    ・・じゃ、行ってくるよ。

    鈴木、戻る。

鈴   『非常勤』って言葉、いいね。
    あたしも非常勤ミュージシャン、て名乗ろうかな。
坂   いつ首切られるか、って感じでね。
鈴   あ、それは今すでにそうなんだけど。
    非常勤、と云うまでもなく。
    でも、どこかに所属してどうこう、って云うより、
    小さくても自分でいろいろ把握しながら
    それぞれに合うフィールドでやってく、
    って方がこれからはいい、と思ってるんだけど。
    あんまり組織とかネームバリューがどう、
    って世の中でもなくなりつつあるよね?
坂   でも、文化の面ではそういう古い特権階級っぽい世界が
    全くなくなっちゃうのもつまらないけどね。
鈴   そうだね、
    『なんだかありがたい』って世界も残った方がいいね。
    今残ってる昔のものでなんだこれ、おもしろい、
    と思うものって、
    そういう感覚があったからこそ残ってるものもあるもんね。
    みんなおなじ土俵からスタートしましょう、
    みたいな感じだけになっちゃってもねえ。
坂   そうだねえ、それに合わないものもあるからねえ。
    全部合理化じゃ片付けられないねえ。
    そういえば、ずっとまえ京都のライブのとき、
    新聞にけっこう大きく載ってたよ、『鈴木亜紀ライブ!!』って。
    あ!切り抜かなきゃ、って思って、とってあるの。
鈴   えー、ほんと?今度見せて。
坂   どっかやっちゃった。(笑)

引き上げ湯葉を頼む。
    (固形燃料で豆乳を熱しながら自分でつくるもの。)

店の人 では。しばらくすると膜がはって参りますので。
    こちらの竹串ですくって、
    わさびかしょうが醤油でお召し上がりください。
    あとこちらのうちわでゆっくりあおいでいただきますと
    早く膜がはります。。
鈴・坂 うわー!!

パタパタあおりながら

鈴   そういえばさ、東京でしょ?大学時代。
坂   ううん、奈良。奈良だよ。
    (パタパタ・・)
鈴   え?東大って、奈良にもあるの?
坂   え?東大?誰が?あたしが?聞いたことない。
鈴   東大を首席で出たんじゃないの?だって、
    旅でそう聞いた記憶があるんだけど。
坂   ちがうよ、東大じゃないよ。(笑)
鈴   え、ちがったの?(笑)。
    旅いらい、ずうっと坂井さんは東大卒、
    って思い込んできたんだけど。
坂   どこでそんなデマが。
鈴   あらまあ!そうだったの(爆)
    なんにしろ知性的な感じは最初からしてたんだけど(笑)。
    中国で黄色いシャツ着てたよね?
    なんかあの黄色をすごく覚えてるんだけど。
    気ち○いの色がよく似合うなあ、って思って。(笑)
    あと、この人乗り物のるとすぐ寝るなあ、って。(笑)
坂   うわ〜。(笑)



鈴   つぎ、中国はいつ?
    (パタパタ・・)
坂   あの肺炎が(SARS)おさまってから。
鈴   話は戻るけど、中国古代詩に、昔はあんなによかったのに
    今はこんなになっちゃって、っていうような、
    昭和枯れすすきっぽい心情ってある?
坂   あ、あるある。それは数えきれないくらい。
    ひとつのパターンとしてある。
店の人 すみませ〜ん、武勇(日本酒)下さい。
鈴   (鈴木の頼んだデキャンタを指し)よかったらワインもどうぞ。
坂   けっこう自分を食いつぶして飲んでるんだよね。
鈴   命がけ?(笑)
坂   だから、強い、ってわけじゃないんだけど。
鈴   あたしも強くない。
    今日は(大阪、名古屋のライブ直後でエネルギー)
    使い果たしてあるから終わるの早いと思うよ(笑)。
坂   最近旅は?
鈴   国内は島めぐりかな。
    このあいだ甑島って、行ってきたんだけど。
    五島列島の下の方。なんにもなくて面白かった。
    あと、沖の島、って知ってる?
    女人禁制の島があるんですけどね。
    (パタパタ)
坂   行ったの?
鈴   (笑)女人禁制だから。行けないの。
坂   え、神社系?



鈴   うん。宗像神社ってあって、それの関係の島で、
    昔からお祭りをそこでやってたとかいうんだけどね。
    すごいよね?21世紀にもなって、日本で女人禁制なんて。
    で、役場に電話したの。
    そしたら、女人禁制って、今でもかなり厳密に守ってるらしい。
    男の人でもなんか手続きしないと入れないらしいんだけどね。
    役場の人が、昔は泳いで島まで渡るしかなかったから、
    女の人が海につかって体をひやすのは出産によくないから、
    と思われます、とか、体のいいこと云ってたよ。
坂   体のいいことをね。へえ、初めて聞いた。
鈴   あとさ、姫路から舟にのって25分くらいのところに
    家島ってあって、そこ行ったの。
    そしたらこのあいだニュースで、家島の役場が
    ある地域の成人一人につき70万円づつプレゼントした、
    っていうのやってて。
坂   へえ〜、すごいね!住んでるだけでもらえるの〜。うらやましい。

かなりお酒がまわってきて

坂   ・・何の話してたんだっけ?
鈴   何だっけ?
坂   あ、フィギュアスケート。なんで好きなの?
鈴   元はと云えば母親なんだけど。
    昔からテレビでフィギュアやってると、
    テレビのなかで滑ってる人を見ては、
    『あたしもいつかこうなるの』って云うの。
    自分よりお兄さんお姉さんだと思ってるんだよね(笑)
坂   (笑)選手って20代でしょ、だいたい。
鈴   そう。で、気付いたら私もそうなってて、
    『あたしもいつかこういう風に』って思っちゃってたの。
    DNAかな。(笑)でもあの優雅さって年下と思えないじゃない?
坂   わかるわかる。私もはまってたことがある。
鈴   結構影響うけちゃって、アニシナさんていう
    アイスダンスの人いるんだけど、
    長〜い髪を赤く染めてたの。それで・・・
坂   あ!それで赤くしてたの?(笑)
鈴   そうなの!
坂   戸田(サッカーの選手)じゃなくて?(笑)
鈴   戸田じゃないの。サッカーよりもっと優雅なのが好きなの(笑)
坂   なんだ、ワールドカップ(のせい)かと思ってた(笑)
鈴   『日活ロマンポルノ』(赤い髪の女)
    とも云われたけどね。(笑)
坂   (笑)
鈴   話し変わるけどお父さんは何やってる人なの?
坂   やっぱり似たようなこと。時代は違うけど中国文学。
鈴   やっぱり。それもDNAか。(笑)
坂   (笑)

たけのこ炭火焼き、なす、etc

鈴   休みは何をしてる?
坂   研究したり。・・・論文書いたり。
    ・・・ボーっとしたり。(笑)
鈴   どんな子供だった?
坂   ボーっとした子だった。
鈴   ・・そうだろうね。(笑)
坂   わかる?(笑)鈴木さんは?
鈴   う〜ん、けっこうビンカンだったかなあ。体が弱くて。
坂   エ?そうなん?
鈴   うん。体が弱いと一人の時間とか多くなるじゃない?
    で、本読んだりするから、わりと哲学してたかも。
坂   私もボーっとはしてたけど、
    何か人と距離をどうとっていいか
    わからないようなところがあって。
    表立ってそういうところを出すことはなかったとは思うけど。
鈴   やっぱり敏感は敏感でしょ?あと、個性、強いよね?
坂   そうかな。自分じゃわからないけど。
    ボーっとすることで自分を保ってるようなところもあったかも。
鈴   因島生まれでしょ?ニンゲンて、
    生まれ落ちた土地の気配を一生持ってるんだってよ。
坂   そうか。のんびりしてるからなあ。因島は。

    

鈴   私は忘れ物の女王で。
    子供のとき、すごいスパルタの鼓笛隊に入ってたんだけど、
    合宿とかいくと、必ずパンツとか、忘れてきちゃうの。
    で、次の練習の日に、すごい怖い先生が、
    あ、その先生はあんまりにも怖いから
    すごくトラウマになってたんだけど。で、その先生が、
    『こんなものを忘れてきたバカがいる』って云って、
    みんなの前でそのパンツを広げるの!グンゼを!
坂   ひどい!(笑)
鈴   名前も書いてあるの、自分で、マジックで、
    子供だから『すず木あき』って、『木』だけ漢字で!(笑)
坂   あははは!
鈴   み〜んな誰のか分かってるの。
坂   で、どうしたの?ビンカンな子だったんでしょ?
鈴   うん、ビンカンはビンカンなんだけど、
    変にのんびりしてるところもあって、
    ああ、あたしのパンツだなー。って、
    ぼんやり眺めちゃってるの。
坂   (笑)一応集団の中ではそれなりにやっていけたの?
鈴   まあねえ。でも浮いてる、って意識はいつもあったから。
    坂井さんもそうでしょ?
    やっぱり『非常勤講師』っていうのが合ってるよ。
    ・・って、勝手に決めてますけど。
坂   ホンマや。でもまあ、どこかに属せば属したなりに
    しばらくはやれるかも知れへんけど、長もちしないかも。
鈴   うん。しないよ。・・・しない、と、思いますよ(笑)。
    ・・・今シラフ?
坂   ・・・ケッコウたゆたってる。ふふふふふ。
    お茶漬け食べようか。

●●2003年4月25日 はるさめ 京都 御池 亀甲屋にて
湯葉をあおいでまさに『ぬる風』対談となりました。
坂井女史はお酒は飲みますが(すごく)、
品の良いしゃべり方は飲んでも飲んでも変わりません。
地方のライブを終えて、重い荷物を宅急便で送ってしまって、
身軽になってふらっと京都まで会いに行ったわけですが、
久しぶりに友に会い酒を酌み交わす李白、
杜甫気分にさせてもらえました。

付け足し:飲み代を、坂井女史はワリカンを申し出てくれたので、
1度だけ(形だけ)『いいえ、今日は私が』と云ったのですが、
2度目にあっさり『じゃ、よろしく』と云ったところ、
女史からいただいたお札の中に
某デパートの商品券がはいっておりました。
時たまギャラを『お米券』で払うことのある私は、
ついニヤッとしてしまいました


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