緩風(ぬるかぜ)対談 (1/2)

鈴木亜紀 vs 坂井多穂子 女史

坂井多穂子 女史 profile
さかいたほこ・大学非常勤講師 中国古典文学を教えている。
奈良女子大学文学ハカセ。因島生まれ。
大学卒業後中国南京大学に1年間留学を経て、現在、滋賀県在住。妙齢。
鈴木亜紀とは2000年の中国雲南省への旅行で知り合っている。
坂:坂井 鈴:鈴木
ほたるいかをつまみつつ
鈴 坂井さんて、教授なの?
坂 いや、教授はもっと年輩の人がほとんどなんだけど、
私なんかはアルバイトみたいなものだから、
一年ごとに契約しなおすの。
で、もう結構です、とか云われることもあり得るの。
ボーナスもないし。・・まずしいよ。(笑)
鈴 へえ。一緒だね。(笑)
坂 今日教えてたのは、中国の昔の漢詩とか、
ほら、高校の教科書にのってなかった?
ああいうの。
鈴 レ点とかついてる?
坂 あれは自分でつけるんだけどね(笑)
鈴 え(笑)、そうなんだ。詩が専門?
坂 そう。
鈴 なんで中国の詩、しかも古典の方にいったの?
坂 う〜ん、まあ、昔から横文字より漢字のほうが好きだったの。
あと、中国文学って、結構、ホラ吹きなところがあって、
例えば『白髪三千丈』とかって、三千ジョウって、
長さのことで、9キロくらいなんだけど、
白髪が9キロものびちゃって、って云い方をしてみたり。
そんなん、ホントはないやんか。面白いと思って。

鈴 オーバーなんだ。
あ、そういう意味ではねえ、
百人一首の『雲居にまごう沖つ白波』って
下の句があるんだけど、
あんまりにも遠くの波の白いのが雲みたいに見える、
って云ってるの。
確かに言葉でそういうと、
すごーい広い感じで云いたいことはわかるけど、
実際そんなことって無いと思うんだよね、そんな立ち位置って。
で、そのハッタリが気に入って、パクったの。
坂 え?どれで?
鈴 海が見えるよって唄。
坂 どこ?
鈴 雲とまちがう〜遠くの白い〜波〜、ってとこ。
後にも先にもそれだけだけどね、『お借りした』のは。(笑)
坂 へえ!
鈴 中国の古典の詩って、何がテーマになってるのが多いの?
友との友情とか?
坂 あ、そうそう、そういうの多い。
鈴 遠方より友来たりて、
酒飲んで・・酔っちゃった・・、(笑)とか。
坂 そう。こういうの(今自分達がやっていること)が。(笑)
麩をつまみつつ
鈴 (笑)日本てさ、万葉集とか百人一首とか、すごいでしょ、
ギトギトの相聞歌みたいなのが。
坂 中国(詩)はあんまり恋愛とかはないなあ。
もともと儒教だからだと思うんやけど。
あんまりストレートじゃないところがあって。
中国での恋愛詩は、相手が奥さんか妓女のばあいで。
鈴 なに、ギジョ、って。
坂 遊女みたいなかんじ。芸者さんとか舞妓さんとか、
そういう感じかな。
鈴 じゃ、芸があったりするの?
坂 そう。ただニコニコしてるだけじゃなくて、芸を持ってたり、
いろんな話についていける人のことらしい。
でそれを職業にしてる人。
だから恋愛ゲームみたいなかんじかな。
鈴 じゃ、結構、妓女と関わるのは
ダンシのステータスみたいな感じだったのかな。
万国共通だね。(笑)
坂 やってることはね。(笑)
うん、だから、日本みたいに自由恋愛の詩、というよりは、
ある程度パターンが決まってる感じ。
相手は奥さんじゃなかったら、妓女、と。
鈴 日本の昔の和歌なんかもそうだけど、
すごーく若い人がドロンドロンなの詠んでたりするでしょう?
十代とかで。
坂 うん、精神年令が今とちがうんだね。
鈴 何歳、っていう数字じゃなくて、全体の時間の何割、
って感覚だね。
坂 人生50年だったら、もう半分以上終わっちゃったんだね。
かつををつまみつつ
鈴・坂 (もぐもぐ)おいしい、おいしい!

坂 なんかゆっくりペースで飲んでるね。普段何飲む?
鈴 あたしは赤ワインが多いかなあ。
坂 いいね。女のヒトが赤ワインとか飲んでるとかわいいよね。
鈴 そうだね。
坂 私はすぐ日本酒だからかわいくないみたい。
鈴 そうだね。(もぐもぐ)
へしこ(さば)焼き、炭焼きたけのこ木の芽みそ合え、しらすわかめ
鈴 その、中国の古典詩にも、『個性の世界』っていうのはあるの?
坂 あるある。どうやって人と違うものを出していくか、
っていうものはある。
私がここ1、2年よく読んでる人なんかは、汚いもの、
こういうところで(飲食店で)
言えないようなもの を詩にしてる。
鈴 え、汚いものをきれいに詠むの?
坂 汚いものを汚いまま(笑)。
鈴 (笑)その人は当時(リアルタイムでは)
どう評価されてたんでしょうね?
坂 ま、一応けっこう評価高かったらしいけど。
鈴 今残ってるってことはそうだよね。
坂 うん。私の専門は宋代(AD960〜1127)なんだけど、
その頃の詩のヒトは、
自分でまとめて詩集を作っちゃう人とか多くて。
鈴 へえ!じゃ、インディーズだ。
坂 そうそう。(笑)
鈴 人のやってることって、変わんないね。(笑)
箸など、いろいろテーブルから落とす
鈴・坂 ああっ!
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