薫風(くんぷう)対談1 vs 西川治(画家、文筆家、料理家)

薫風(くんぷう)対談1 vs 西川治(画家、文筆家、料理家)

鈴木亜紀 vs 西川治

西川さんは鈴木亜紀を『アコちゃん』と呼びます。結構好きな呼ばれ方です。すでにアーティスト西川治さんをご存知の方々はたくさんいらっしゃるとは思いますが、あらためて、私からのご紹介を。

 

西川治 profile

写真家、文筆家、画家。
料理人としてもテレビ、雑誌、コマーシャルなどのマスメディアで ユニークな視点から各種料理を紹介し続けている。
著書は「PASTA パスタ」、「快楽的男の食卓」、「男子厨房に愉しむ」、「世界朝食紀行」、 「こんなにおいしいサラダ」、「イタリア半島食の彷徨」「唐辛子料理」 「にんにく料理」「ガツ旨 こんな豚肉料理あったのか!!」など60数冊。
サンデー毎日「アサヒビール対談」81回連載。1999年共同通信社「たべ物地球塾」を連載。
富士フィルムカレンダー撮影20数年間継続。
現在は、日本経済新聞で「フードは語る」を連載。
TBSハイビジョン「芸術家の食卓」NHK「ジャンコクトーへの旅」「おしゃれ工房・暮らしを撮る」 「金曜アクセスライン」等に出演。
また一年間キャスターとしてNHK「男の食彩」に、 テレビ東京「食の風景」ではナビゲーターとしてレギュラー出演。

西:西川  鈴:鈴木   T:カメラのT)

鈴・西:じゃあ、カンペーイ!
西:中国じゃあさ(中国から戻ったばかり)、毎ンち何十回もカンペーイをやってたよ。
鈴:何しに行ってたんですか?
西:来年、あ、今年か,出す本の。料理の。写真3000点くらい撮らなきゃだからさ。(スズキお手製あじの押し寿司を見て)アコちゃん、なに、料理好きなの?
鈴:ん、自分の食べたい時だけ作る。いい時はいいんだけど。
西:ダメなときはダメ?ま、食べてみないと分からないけど、見た目はうまそう。どれ・・。
鈴:ちょっと寿司は甘かったかも。甘い,って、甘味じゃなくて酢がうすい。ズ-(花粉で鼻ススル)
西:うん、そうだな。ちょっとな。酢で洗うくらいじゃないと。でもおいしいよ。
鈴:料理の本は何冊出るんですか?今年。
西:8冊くらい予定してるよ。毎月10日くらいづつ中国行かなきゃ。(寿司を指差し)これ、アジ?
鈴:そう、アジ。一応自分でおろしたの。好きなんだよね、グジャって触るのが。
西:へえ、なに、静岡じゃ祭りとかでやっぱり魚?
鈴:うん。でもねえ、あれは鯛だから女子供にはちょっと難しい。生きてるし。
西:だいたいそういうもんだよな。
バリなんかでも祭りじゃあ男が料理するんだよ、不思議なもんだねえ。ブタの丸焼きとかさ。力仕事なんだよ、料理は。
(20m位向こうからギター弾語りの歌。反対側から太鼓が聞こえる。)
やあ、いいもんだね、こうやって外で。
鈴:BGM付きでね。
西:オレはねえ、最初アコちゃんに会った時、すげえふてくされた女だなアと思ったんだよ(笑)あれ、子供と同じなんだよ。
鈴:(笑)
西:で、あのときCDもらったじゃん。で、最初にあれ、歌詞カード読んで。CDかける機械がなかったから。ものすごくよくわかったわけ、ふてくされてる訳が(笑)。
鈴:それは・・すごいホメ言葉だねえ!(笑)
西:でさあ、これは間違ってるかもだけど、恋愛でもなんでもさあアコちゃんの場合、なんか『どうでもいいやあ』みたいなのが、詩のなかにもあったけど。ふてくされが(笑)。
鈴:うん。それはいつもそうだなあ。子供の頃からずっと。
いろいろいつも凄いんだけど(?)でもどっか根っこで『どうでもいいやあ』って思ってるんだね(笑)。
西:うん,そうだろう?(笑)
オレもそうでさあ,フラれようと死のうと、まあ最後はどっちでもいいや、って思ってるんだよね。(笑)
鈴:詩を書いてるときはねえ、う~ん、何だろ、断片断片はすごく正直なんだけど、どこに向かって自分は書いてるのかはわからないなあ。何に宛てて書いているのか。で、そのわかんないカンジが好きで。
西:オレだってそうだよ、そんなのオレだってわかんねえよ。
鈴:で、わかんなくなりたくてそれをやってるようなところがね。ある。ズー。
西:そうそう、オレはね、文章書くにも何にも、結論はない。
この頃さ、多いじゃん、なんていうの、人生のハウツーものみたいな本とか。
オレはああいうのは絶対ダメだね。わかるわけないんだよ、そんな簡単に。
鈴:西川さんの絵にも、『なんだかわかんないもの』がいっぱいあっていいね。
西:それをさあ、セミナーとか行っちゃったら退屈だよなあ人生。
鈴:人って『何である、まるっ。』ていうのを決めて、安心したいってところがあるんだろうね。だから流行るんだろうね。
私もね、小さな波としてはその時その時の『これは何である。』っていうのは出してくんだけど、大きなところで、基本が、根っこが『どうでもいいし、何でもない。』っていうのがあるんだよね(笑)。
西:そう、で、詩を読んで、彼女は絶対的にふてくされだな、って思ったんだよ。(笑)

鈴:生まれは?
西:和歌山。和歌山の材木屋の息子でさ。
鈴:材木ですか!(笑)へえ、ザイモクー。
和歌山はねえ、こう云っちゃナンですけど、ライブで行った中で不思議な土地ナンバーワンですよ。
西:そうだろ~?和歌山はねえ、魚があんなにあるのに、なぜか牛肉の消費がすごいんだよ。
高校生の頃なんか、みんなで集まってすき焼き食って、酒飲んだりしてさ(笑)
鈴:えー、高校生が?すき焼き?やだなあ(笑)
西:そうだよ~。東京出て来てみんなすき焼き食わないからヘンだなあ、って思って。
鈴:和歌山って、屠殺場がいっぱいあったりするんですか?
西:いやどうだか。静岡なんかも似てるだろ?気候が。
鈴:そう。特産物が似てるところはねえ、似てるんですよ、メンタリティも。
静岡、和歌山、宮崎。自然環境がすごい豊かで。
西:ちょっとノータリンが多いね?
鈴:そう。ふふふふふ。アットウテキに、それは思いますね(爆笑)、
アタシが言えたもんじゃないけど。アタシ、最初に和歌山に行った時にねえ、ナンダコレハ、と思いましたよ。(笑)
西:でもノリはいいだろ?
鈴:いや・・(笑)。関係者はがんばってくれたんだけど5人くらいしかお客さんいなくてねえ。
結構スペースは広々してるから余計にサビシ~い感じ。何やっても何云ってもみんな石のようで(笑)。
でもそうなると逆に面白くなってきちゃってアタシとしてはカタルシスはあったんだけど。
開演も1時間半くらい押しちゃって(笑)。
西:南国だからなア。衝撃的なデビューだったねえ(笑)。
鈴:なんかそうなるとしつこく行きたくなっちゃって。結構その後も行ってますね。よくしたもので一人私の歌を大事にしてくれる人がいるから、この人がいる限り行こう、って。
で,だんだんいい感じになりつつはあるけど。
こないだははじめて和歌山の人が、ああ、なんだ、一緒ジャン、てはじめてわかって楽しかった。
西:ああいう歌を聴いたことがないんじゃない?まず。
鈴:うん、そうかも知れないですね。いわゆるジャンルがはっきりしたものはいいけど『これは何です』っていうのがないととっかかりにくいから。
西:だってびっくりするよ。ふてくされてるから。
鈴、西:(笑)
鈴:うふふ、なかなかね、『個』と『個』っていうところまで行くのには時間かかりますね。
でもこないだはアンケ-トなんかもびっちり濃く書いてくれてあって、来て良かったって思いましたよ。

 

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