<89>ロールキャベツの思い出
- 2026.01.07
- column
2026年が来た。
大みそか、愛知の渥美半島は伊良湖岬へほぼ20年ぶり?に、釣り友と行った。
いらごみさき、と読む。当時はちょくちょく訪れていたのに、いら『こ』でなく『ご』と濁るのを知ったのは10年前だ。
伊良湖にも雨は降るだろうに、私のイメージの中では、気が遠くなるほど明るく純度の高い日差しが、”常に、絶え間なく、とめどなく” 降り注いでいるのが伊良湖だ。うっかりしているとあの世へ行ってしまいそうな。そしてこの日もそんな圧倒的な日差しが、いちめんの青々したキャベツ畑の上に照りつけていた。釣り友が運転してくれるのをいいことに、道中、北の豪雪地に住む友人と年末の挨拶ラインなどを交わしながらで、キャベツ畑の写真を送ったら、『!』マークがいっぱいついた返事がきた。
釣り場の下見、などと云いながら、小さな港々に立ち寄りつつ、道の駅で特大キャベツを買った。道中おびただしい数を見ているうち、そういえば毎回ここでキャベツ畑に感嘆して写真を撮るくせに一度も買ったことがなかったことや、視覚的サブリミナル効果?で、迷わず買った。特大なのに146円!!
釣り友も、また別の道の駅で、サブリミナル効果なのか『もらい買い』なのか、やはりキャベツを買った。私のより小さく、でも値段は大してかわらず、内心ちょっとシメシメと思った。最後に寄った港では、たくさんの漁船が大漁旗をつけて停泊していた。この光景、はしゃがずにはいられない。活力がみなぎってすっかり上機嫌になる。実は人生で二度目、ひそかに買ってある、まさにその夜当選番号が決まる年末ジャンボが、当たるような気がしてならなくなった。
かつて伊良湖へはよく、母を助手席に乗せ、自分で運転して来ていた。時たま、国道から海へ向かう ”気になる” 路地のあたりで車を止めては、ふたりで雑木林を分け入っていって、カラスウリなどをとった。当時すでにけっこうな年だった母だが、真っ赤なカラスウリを取るために、高いところへ危険を冒してよじ登ったりしてたっけ。
国道には新しいお店がたくさんできていて、昭和っ気も残りつつ、いかにも今風なスッキリ涼しげな建物が増えている。
キャベツは実家の母と半分こして持って帰ろうと思っていたが、実家に戻ると冷蔵庫にキャベツが丸ごとひとつ入っていた。そういうわけで、年明けてすぐ、巨大な伊良湖キャベツを丸ごと東京に持って帰った。道中、大・大・大渋滞を耐えつつ思っていたのは、記憶の中でいちばん美味しいロールキャベツのこと。今度こそひとつ、あれに近いものを作ってやろうじゃないか!
以前、アナログカメラで写真を撮っていたころ、幸運にも割とひんぱんに、写真展のチャンスをいただいた。規模の大小はともかく、自分が動かずとも周りがいろいろ企画してくれ、もちろんそのためにはうんざりするほど長く暗室にこもったり、額をどうするかなど、自分も頑張らなきゃならなかったが、なんだ音楽活動よりも楽にコトが進むじゃないか、とすら感じたのを覚えている。大変だったけど面白かった(数年後、目が悪くなり、資材もとんでもなく高騰したのをきっかけにすっかり写真からは遠かってしまったけど)。
で、中でも数回展示させてもらった、千葉の小さな画廊カフェNAJAの女将さんのロールキャベツが、私にとってのロールキャベツ界における美味No.1であり、そのまま更新されていない。レストランと銘打ってるわけでもなく、(確か)ギャラリーカフェとか、そんなタイトルだった。なのにあんなに満足感あるロールキャベツが出てくるとは!千葉は遠い。でもそのロールキャベツが食べたくて、後日わざわざ出向いたこともあった。
千葉は遠い。だからその後、何度か自分で作ってみた。
その都度、キャベツ破レ、モノ包ムニ能ハズ、キッチン水浸シ、キャベツ破片方々散ル、などでガッカリ疲れた。女将さんがこともなげに云う作り方を試してもみたが、似ても似つかなかった。
何度かそんなことを繰り返し、珍しくいろんなレシピも調べてその通りやってみるが、だめ。キャベツをまず茹でてから一枚づつはがすことを覚え(つまり底広の鍋を手に入れ)、モノ包ムニ能ウ、ようにはなったが、何かだめ。包むときに、片端だけ折り返してくるくる巻いて、最後にもう片方を内側につめこむと、かんぴょうで結えたり、つまようじで止めたりしなくてOKってやつも、結局は鍋の中でほどけて、ダメ(巻き方が甘いんだろうが、キツく巻くとうまく端っこをつめこめない。NAJAではそんな『ヒモやピン』など使ってなかった)。味は、まあ、素朴で悪くはないんだけど、とにかくあの満足感からはほど遠い。
そんなこんなの後の、伊良湖キャベツだ。
これをうまく作って、ツアー留守中に植木の水やりをしてくれる友人や、ご近所に『おねんが』って云って渡せば、スズキアキの株もグンとアガるに違いない。とまあ、皮算用しながら大・大・大渋滞を耐えて東京へ戻った次第だ。
しかし。
具とキャベツがばらけてしまい、結局つまようじの世話になった。味も何だかボヤけている。
なんかさ、そもそも別にキャベツで包まなくても、肉団子とキャベツの煮込みでいーんじゃない?これさ、別にまずくはないけどさ、もらって嬉しいってわけでもないよねえ?やったー!って感じ、しないよねえ?
…あれこれ自分でツッコんだ末萎えてしまって、とりあえず巻いた分は冷凍しておいて、そのうち全部自分で食べることにした。
巨大なキャベツだったので、それとはまた別に、破かず剥がすために丸茹でした残りが、ムラに火が通った状態で大量に冷蔵庫に入っている。当分この半茹でキャベツを、あの手この手で料理しては食べ、忘れたころに冷凍ロールキャベツにちゃんとつまようじをさして煮込んで食べるのだアタシは。
これにて新年のごあいさつとさせていただく。
今年もよろしくお願いします。
P.S. ジャンボ?『当タルヨウナ気ガシテナラナイ』というマジックを買ったのです。
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