<09>万年筆三代目
- 2003.05.15
- column
漢字をよく間違いますが、文字を書くのは結構好きです。その割には情けねえ字を書くじゃねえか、と誰かにつっこまれそうですが。私はめんくいじゃありませんが、人の書く文字には密かに反応します。
うまい文字、読みやすい文字、ミミズ、角張り、グジャグジャ、いろいろあります。
好きなのはどんな字であれ、並び方が一つの個性の世界になってるのがいいです。わざとらしいのはヤですけど。
実はそういうことで勝手にグっと来たりガッカリしたりしてるわけです。マイナーだな。
16才から万年筆を使いだしました。B5版の、表紙が厚い大学ノ-トにそれで何やかや、とりとめないことを書くようになりました。
その初代万年筆は父親がどこかへ行ったとき土産で買ってきた、シャープペンとボールペンと3つセっトになってたやつで、とても文字が細くて、女の子っぽいデザインのやつでした。 20でアフリカに行った時、どっかに落っことしてまいりました。
なくしてみて、あのノートに万年筆で文字を書く時間がささやかな個人の憩いであったことに気がついて、父親になくしたのを残念に思う、と云ったら、じゃあこれを使え、と自分のお古のやつをくれました。これが二代目、シェーファーの金色のやつです。
前のやつよりずっと文字が太くて、持った感じも重くて、女の子っぽくないところがとても気に入って以来ずうーと愛用しています。唄までつくってしまいました。旅のおともに欠かしません。
ブラウンのインクを入れてることが多いです。ノートの方は30册以上になっています。
万年筆は、けして便利でなく、インクもなくなりやすいし、飛行機の気圧変化で必ず漏るから、機内で何か書いていると、飛行機をおりる時には手にいっぱいインクがついていて、悪戯小僧の手のようになっています。それにインクだって国産じゃないやつはお高いから結構カネもかかります。
このシェーファーは、アメリカの会社で、アメリカのものって、今一つ個人的には縁がうすいですが、これは愛用しています。なぜって、父親が使ってたから、というだけですが。
シェーファーの中では定番で、別にお高いやつではありません。¥12,000くらいです。あんまりお高いとなくした時のことを考えると気楽に持ち歩けませんし。
きのう、スペインから帰国したのですが、特に買いたいものはなく、まあ、強いて買うならサフランだな、お酒はしばらく飲まないことにしたから買わないし、と思ってたんですが、たまたまスイスエアーで行ったこともあり、機内の雑誌でCARAN d’ACHEとかいうスイスのメーカーの万年筆がとても素敵で、あ、そうだ、自分チョイスの万年筆も欲しいなあ、と思い、トランジットのチューリヒでいいの見つけたら買ってもいいことにしたわけです。ふだんの自分はだいたいケチケチしていて、旅に出た時ぐらいでないとこういう贅沢は怖くてできません。
行きのトランジットでやっぱりCARAN d’ACHEのいいのをみつけたんですが、15,000円くらい。
すごくいいけどもうちょっと文字が太いのがいい。そういうわけで取りあえず買わずにおきました。
マドリードでまずサフランを買って(食いしん坊の女友だちの分と自分の分と)、ものの試しに、とある有名デパートに行ったら、あったあった、実はイタリアのアウロラのやつが一本欲しいな、と前から目をつけてたんだけど、そのアウロラのいいのがあったんです。シェーファーのもいいのがありました。CARAN d’ACHEも入ってたけどそこのは今いち。どうしようかと思ったけど、シェーファーを買うことにしました。と、お店の人に云ったあとやっぱり気が変わって、アウロラにしました。
これで3代目がアウロラと決定。銀色。もちろんシェーファーも今後も使います。
文字の太さの用途にあわせて使い分けるのです。ささやかな仕合わせです。
あたしこういうところはちょっと男子みたいかも知れません。男の人って、道具のささやかな悦びを愛する傾向がありますでしょ?全然そうでない人もいますけど。いずれにせよ、ホント、さもない話ですが。
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