<12>真夏の一日

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朝早く起きて江ノ島へ行った。
やきはまぐりとビールをしに、ではなく、水族館で唄いに。
『歌う』という大義名分があると、安心して出かけられる。そうでないときは、ちょっと後ろめたさもあって。そのカンジもまたいいんだけど。

片瀬江ノ島駅を降りると、ヒトが渋滞していた。
朝10時というのに。『がんぐろ』の女子達が、なんだここにいたのか!というほどたくさんいた。肌だらけ。人類は『口説き口説かれる』ことしか考えていないように見える図である(ちがうかもしれない。いや、それは真理かもしれない)。子供らもたくさんいた。
台風一過で、空はピカーンと晴れ渡り、やっとホントの真夏がやってきたようだ。
と云ってもワタクシは湘南の海で夏を感じたりはあまりしない。海水浴場のこのような夏も立派に夏かもしれないが、子供の頃のイメージは一生のもので、クマ蝉がビービー云ってないと、いつまでも初夏の気分だ。

水族館の人に聞いたけれど、クラゲは脳がないのだそうだ。どういうカンジだろう。首から上がすごく軽いのだろうか。
以前長かった髪をバッサリ切った時、ものすごく頭が軽く、涼しくなった。あの驚きは未だに覚えている。それだけで全部オーケー、と感じた。『最高だぜ!』と連発した。なんで今までこんな重たいものをのっけていたんだ、と。

軽ーい感じで世を漂う。何も考えない。死ぬと溶けてなくなる・・・。

なかなかそうはなれない。

江ノ島水族館は世界でも特にクラゲにかけてはスペシャリストなのだそうだ。係の人と、クラゲに囲まれてつれづれ話をしたくてウロウロしてみたが、忙しそうだったのであきらめた。

歌はどうだったかというと、恥ずかしながら2日前にもらったファックスに2回ステージと書いてあったことをちゃんと読んでいなかったみたいで、一回目が終わって、『なんかみんな飲まないですねえ、ねえ?ねえ?』と云いながらビ-ル飲んでしまい、『じゃまた2回目もよろしく』と云われた時には『またまたァ』と云ってしまった。このごろこういうことが多い。脳があってもこれでは。
寝不足で朝早く起きたのでちょっとまわった。そういうわけで、2回目のお昼のライブはかなりいい気持ちだった。ちょっと舌がまわってないかも、と云われた。

ゆうがた、『がんぐろ』さんや『いけめん』さんたちの熱い流れに巻き込まれながらも屋台によって、ひとりやきはまぐりとビールをした。
ギラギラ光る海面を、鼻にシワよせてにらみつけながら、ひといきついて電車にのった。人相、悪かったかも。

暮れ切る少し前、家についた。

明日も早起きして用事をすませ、その足で実家に帰る。
東京に暮らす今の私には、夏というと、故郷の祭と花火大会のある、明日からの3日間だけのように感じる。子供の頃からのことだから、しょうがない。

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