<20>ばらむつ(続・あぶらそこむつ)

<20>ばらむつ(続・あぶらそこむつ)

去年コラムに『あぶらそこむつ』のことを書いた。取引禁止に指定されている深海魚のことである。
そのうち手に入るから、そうしたら送る、と云ったきりだった知人から、つい最近クール宅急便が届いた。手紙が添えられていて、『あぶらそこむつはその後手に入ったが、友人がやってきたのでつい送ろうと思っていた分を食ってしまった、遅くなり申し訳ない』、そして、あぶらそこむつととても似ているが、正確には『ばらむつ』という、同じく取引禁止魚の冷凍切り身が、スチロール箱の中に、ごろん、と入っていた。

手紙には、食べ方が詳しくボールペンで書かれており、そのぎっしり並んだ文字から漂ってくる気配に興奮を覚えた。
以前も書いたように、「あぶらそこむつ」や「ばらむつ」は、人間には消化できないロウのような成分をたくさん含んでおり、ヒトの消化器を素通りしたロウは、そのままチュルーと排せつされるということだ(なんでも、これをラー油症候群と呼ぶらしい)。
ライブなどしていて不随意にそうなってしまっては困るから、そうなってもいい時期までしばらく待って解凍した。
本当は友人を呼んで皆で食べたかったが、まずはひとりで頂くことになった。他人の家でチュルーとなったら、友人達も気まずかろう、と。

その日、刺身で3切れ。
翌日から、醤油漬けにしたのを2、3日間食べ続けた。
とくに醤油漬けは、ひとくち食べたとたん、『んー!!』と声がでるおいしさ。パサパサした感じはもちろんないが、そんなに消化不可能なまでのアブラっこさのようなものは感じない。刺身で食べたときにはアブラっこさ(焼津で時たまありつける大トロのような)ではなく、何かコラーゲン的感触であった。
ばらむつの皮には、鋭い二股トゲのようなうろこが並んでおり、魚の皮好きの私としては、気をつけて口に入れてみたが、二股トゲをいちいち口の中で分解するのがメンドウになり、結局皮はいただかなかった。こんなの釣り上げたら大変だろう。

・・・と思って、インターネットで調べてみると、ある釣りのサイトにばらむつを釣り上げた人の写真が出ていた。体長150CM、顔恐し(あ、魚の顔ね)。
ちなみに、http://www4.ocn.ne.jp/~katonet/kagaku/doku.htmのページに、毒性のある動植物についてリストがある。ばらむつとは別に、サキシトキシンという毒性を含むものに、『すべすべまんじゅうがに』とあるが、一体どんな蟹だろう。こうして、4日間くらい、ばらむつの日々を大好物のワサビ漬けと共に送って大そう幸せだったわけだが、なんと5日目の朝、目の下にここ何ヶ月間かあったクマのようなものがすっかり消えてなくなっていた。

ばらむつの味の感想と共に、もしかして美容の効果もあるんじゃないか、と知人に伝えた。
肝心のお腹はどうだったかと云うと、特に心配した程のこともなく、無事であった。刺身も3切れだったし、醤油漬けにするとかなりロウ成分は分解されるらしいとの事だ。

 

 

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