<88>心のスキにマツコさま

<88>心のスキにマツコさま

 暮れて気づけば、月が妙にクッキリしている。

 えっ、もう秋? … か。
 

(コロナのせいで)アタシの季節感が狂ってて…というのもあるが、(コロナでなくても)そもそも、月日の経つのに追いつけてなかったんだっけ…。

 

 

 きのう、自ら志願して、友人の庭の草取りしに、久々に自転車をこいでいった。タイヤの空気が抜けかけていて、太もも前側をよけいに使った。着いてから空気入れを借りれば、帰りはラクラク、だから行きだけがんばれ、と言い聞かせながらこいだ(空気入れ、結局なかったんだけど)。

 

 炎天と虫に完全武装して、一時間ちょっと、もくもくと草取りし、ちょっと雑談して10分ゴロゴロ横になって、冷たいお水をいただいて、水がいいね、と言い合って、妙に充実を感じて、また太ももをよけいに使って昼前に帰宅した。
 ちょっと遠回りすれば、町の自転車屋で空気入れを借りれたんだけど、ウチへ帰ればあるものだから、そのまま帰った。
 汗だくののちのシャワーの嬉しさを満喫。掘ったのをもらったミョウガでソーメンを食べた。あの家の土は素晴らしい。関東ローム層、万歳。

 

 (コロナで)圧倒的な運動不足だから、この程度のことでも、十分スカッとするし、また疲労もする。それに乗っかって、気がちょっとどこかへピョンと飛んで、心にスキのよーなものもできて、いつもならあれこれ夜更かしするところを、ちょっと(ものの10秒くらい)月を見て、秋だァ…と思って、早々寝てしまった。

 

 そのせいかどうか明け方、普段ほぼ全く見ない『夢』ってものを見た。
 なぜか芸能人のマツコ・デラックスってひとが出てきて、すごく優しくしてもらった。何を言われたか、覚えておければよかったんだけど、とにかくその言葉にすごく感激した、ってことしか覚えていない。もどかしいことに。

 

 わりとテレビっ子ではあるものの、このひとの番組を特に見てはいない。
 だのになぜ夢に出てくるんだろう。なぜあんなに良くしてくれたんだろう。かの金言の『原稿』は誰が書いているんだろう!内なる神か自己愛か。なぜそれがマツコさんだったんだろう。

 

 こんな風に、たかが草取りで、少し目先が変わるようなことが、意外と嬉しい。
 だからワタシは、草ボーボーを嘆く人にいつも『抜きに行くよ!』と言ってきた。皆そのときは、『えっ、ぜひ!』なんて言うけど、ホントに『じゃ何にちの何時に来て』と言った人はいない。遠慮してるだけだと思っていたけど、どうやら遠慮に加えて、この無償の提案に対してのホンのちょっとした不可解さがあるようだ。

 

 友人は、『でもなんで?アキちゃんは人が好い、ってことのかな?』
というから、ハテなんでアタシは人んちの草をちょびちょび抜きたがるんだろうか、ほかにやることはたくさんあるだろうにと考えた。
 ちなみに『人が好い』と言われるってことは、わりかし『バカである』と同義と捉えているフシがある。でもそれをやめて、ちょっと考えた。
『そうだねえ … たぶん自分ちだったらやらないと思うんだけど … 土とか草とか触ってるのが好きで … あ、実家が要・草取りだったから。なんというか、… 情緒が … ○×▲□◎♢ かなぁ。』
う〜ん、(コロナで人と話す機会が減っていて言葉が出なくて)もどかしい。何が言いたい?

『 … 』
『あ、つまり、そうだ、なつかしいってこと。』
友人は『ああ。(すこし納得したようすで)じゃ、また来て。』と言ってくれた。

 

 このところずっと座り作業ばかりで、腰痛があった。自転車こぎのせいか、マツコさまのご宣託のおかげか、起き上がってみると、腰痛が良くなっていた。
 意外なことに、太もも前側の筋肉痛もない。あ、あさってくらいに出るのか。